※お詫び
2012年1月に東京教区内にて配付された楽譜集(初版)に於いて「ゆるすってすてきだよ」の楽譜にミスがある事が判りました。ミスを見損なったまま掲載原稿を作ってしまったを深くお詫び致します。当HPに掲載してあります楽譜は訂正済みのものですので、お手数ですがこちらからダウンロードしてプリントアウトして下さい。お願い申し上げます。

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楽譜(訂正済)



1.ゆるすって すてきだよ  
  かみさまいつもそばにいて 
  けんかしたときおこるとき 
  ぼくはやっぱりぼくだけど 
  きみといっしょにつながって
  そんななかまはたからもの 
  きみとぼくは ともだちさ 

2.ゆるすって すてきだよ   
  にこにこイエスさまわらってる
  りょうてでふたりのかたをだき
  だいじょうぶだよとちからづけ
  こころはハッと あたたかく 
  きみとぼくを つつんでくれる
  きみとぼくは ともだちさ  

 

 この曲はそもそも「こどもの聖歌創作ワークショップ」に講師として招かれるにあたり、1つの詞に対して実際にどんな曲が付くのか、又それによってワークショップ参加者の心に“やる気の火”をともしたい…との主催者からの要望で、その実例(サンプル)として提示したものです。同じ時に「ちいさなへいわをつなぎあい」も5タイプのヴァリエーションで提示していますが、「ゆるす…」は主に参加者に向けて、これから取り組もうとしている聖歌に対する音楽的な基準を底上げするものとして2曲を提出しましたが、そのうちの1曲は「水準をクリアしているであろう《良い曲》サンプル」…即ちこの曲で、これが採用となって試作版に掲載され配布と相成りました。


 但し、作曲の目的がサンプルであったが故に、子供の声域(主に未就学児の音域。1オクターヴ以内)を考慮に入れずに旋律を作っており、苦肉の策として調を低くしていますが、音域が広い事には変わりありません。


 又、歌詞もまだ検討の余地を残している状態であったため、作曲にあたっては完成度が高く、改訂の必要のない2番の歌詞に対して曲付けを行い、後になって1番を語感、内容共に2番に倣う形で植松さんご自身が書き改められました。


 これを《良い曲》のサンプルとしたのは、まずは日本語のイントネーションと旋律の関係性にあります。特に歌い出しの旋律線は私自身が実際に歌詞を喋り、それを採譜したものを音型的モチーフとしました(下の譜例を参照)

 

 

 尚、これは飽くまで、巷で“標準語”と言われている語感(アクセント)に基づいています。しかしその後に続く歌メロはイントネーションではなく、 センテンス(語句)毎にそれぞれに見合う旋律を探し、付けていく格好で出来ています。音楽学上の論理的整合性は全くありませんし、譜面の旋律を線で結んでいくと曲が進むに従ってゆっくりと登り坂を上がっていくような様子が容易に判ります。つまり私が最も重要としたのは歌いだしの部分で、このように「喋る言葉」に限りなく近いものとしては、第576番「わかちあえる」が同じ作風を持っています。



 さて、ここからは不採用となったもう1曲について、少々詳しく書かせて頂きます。こちらは副題が「出鱈目サンプル」で、こちらは誠によろしくない曲のお手本です。申し訳ないのですが、ハナから出来の悪い曲を作るのがこんなに笑える事だとは初めて知りました。モチーフを模倣、展開、逆転させたりして論理的整合性を守りながら、最後には破綻して意味不明になっていく様を描いています。いいとこが全然ない、まるっきりダメダメなんです。右には音声サンプル、下には譜例を挙げてご説明します。



 まず、この旋律(下の譜例を参照)だけを見てみますと、モチーフ(基本音型)はビミョーに幼稚な旋律ですが、だからといって決しておかしなことはありません。ただこのモチーフは「1フレーズ」です。一息で歌い切る1センテンスとなっています。




 しかしこれがダメダメで、レッドカード並の“一発退場モノ”である大問題は、終始一貫して旋律が歌詞のイントネーションを完全に無視し、交わることなく勝手に独走を続けているという点です。歌詞を見れば「ゆるすって…」の“っ”で少し間を置くなりして語感を生かすチャンスがあり、これを旋律がみすみす逃してしまうと歌詞の意味も失われかねません。そこを完全無視した「出鱈目サンプル」…、愛がなく、しかも頭でっかちな音楽は、私はダメだと思います…っていうか、ダメなように作ってるんだからダメに決まっとるやろーっ!




 最初に示した「実際に歌詞を喋り採譜したものを音型的モチーフ」の細かい旋律の動きと、改めて見比べて下さい。「喋り」のイントネーションは、実はダイナミックに動く旋律線を持っているものなんです




 しかしこのダメダメな「出鱈目サンプル」は構造上、整合性が(ある程度は)確保されているという点で、人にまやかしの安心感を与える危険性をはらんでいます。しかも絶対的にメロディーがオカシイので、一回聞いただけで耳に残るような、ヘンな毒っ気さえ有しています。ですからワークショップでも一度全員で歌ってみた後、「結構良いではないか」という温かいご意見が出たのですが、いいワケないデショ! ナニ考えてんねん!! 100%、「良くない」です。


 さて、この曲のアナリーゼをやってみましょう。以下に記します。



 人間は時として、論理がセンスを越えて作られたビミョーに焦点がズレているモノを(一時的ながら極めて集中して)許容しようとする傾向があります。わかります?この意味合い。ビミョーにズレているものに対して人は多分、「これは今にしか存在しないのでは?明日には存在の理由がないのでは?」と錯覚するのでしょう。だから愛おしく、受け入れたくなるのかも…悪魔の所業ですな。でもそんなもん、いくらでも作れてしまうんじゃないかと思いますよ、論理的に。


 幼稚園・保育園のみならず、教会の日曜学校で使う事が多いでしょうから、伴奏はピアノ譜にしました。歌譜の上のコードを追っていけば、ギターのコード・ストロークでも伴奏可能です。が、変ロ長調(Bb)ではどうにも弾きにくい!取っつきにくい!という方のため、オリジナルのハ長調(C)の譜面も載せておきますね。ちょっと音が高いですが。

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楽譜(ハ長調版)

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