作曲にあたって

 このテクストは、キリスト教会最古の応答唱(アンティフォナーレ)の1つ、グロリア・パトリと呼ばれる“ドクソロジー”(栄光の歌)なんですって。礼拝に於いてドクソロジーはお馴染みのものです。やはり応答唱である「詩編」の最後はドクソロジーで終わりますし、詠唱では「賛歌」の中にはお約束のように登場します。覚えているだけでも「シメオンの賛歌」、「マリヤの賛歌」、「ザカリヤの賛歌」「キリストの栄光の賛歌」、「復活の歌」、「イザヤの歌」、「万物の歌」と多い。


 作曲の依頼は「大栄光の歌(Gloria)」と同時期にあり、「大栄光…」の作曲で“音楽の源となる混沌の界”とチャンネルが合っていたので、難なく書き記しました。短いし…。


 で、この「栄光の歌」は2タイプ(2曲)書き記しました。


 1つ目の [No.1] は華やかな感じで、大きく歌い上げる賛美に仕上がりました。しかしこれはボツ!(右に掲載しました譜面をクリックすると拡大したものを見ることが出来ます。下のリンクをクリックするとデモ音声を聞く事ができます)




 2つ目、[No.2] は、荘厳な典礼の持つミステリー。聖歌集に載ったのはこちら“[No.2] ミステリー”の方です。譜面は聖歌集を見て下さいね。


 和声的にはムチャクチャにならないように配慮しましたが、カデンツの基本は長三和音(普通のメジャー・コード)の平行移動です。司式者が歌う最初の3小節(アウフタクトを含まない)ではコードが、C - Eb - F - Ab - C という流れ。長3和音を、短三度/二度/短三度/長三度のインターバルで上方向に平行移動させているワケです。



 会衆が歌い出す4小節目からの「はじめのように今も・・・」と最後の「アーメン」は、コードで書くと C - Ab - Bb - C を基本とする同じカデンツを用いています。四角で囲ったEb/G(Es-G-Bの第一転回形)があるのは、司式者が歌う前段を受けてのレスポンスで旋律も同じため。全体からすると、コール&レスポンスが円滑に行われるように、そして会衆には会衆のアイデンティティーが示せるようにと、敢えて「アーメン」は同じコードで動く旋律を選び出したというワケです。



 長三和音だけを使った平行カデンツは、そのままだと結構軽くて明るいワリに、妙に妖しくなってしまいます。ですから所々で和音の第三音を抜いたり、司式者のパート(最初の部分)ではバス声部を主和音の根音“C”にずっとペダルさせ、敢えて調性を曖昧にしつつ重厚さをプラスしました。

 

 演奏のために

 礼拝で用いるチャント/聖歌との兼ね合いに留意しながら、重厚にやってください。他には、特にいうことはありません。

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