『クレヴァニ、愛のトンネル 〜 Original Soundtrack』- Liner Notes

目次

映画とともに聞くトラック解説

1.メインテーマ - 愛のトンネル (Main Theme - a tunnel of love)

 3回打ち鳴らされる鐘の音、圭のつけていた鈴の音が聞こえる導入部の後、タイトルバックに流れるメインテーマ「M1」。幻想的なサウンドに切ないメロディーが響き、後半には激しいゲートリバーブのかかったビートが追加されダイナミックに。メインテーマに相応しい曲です。尚、冒頭のソ・ド・ミ・ラの4つの音型は“緑のモチーフ”と呼ばれ、全曲を通じて形を変化させ登場します。

 この曲は元々、音楽製作開始前に4曲まとめて作られたメインテーマ・デモ曲のうちの1つ「Demo#1:静寂のアンビエント」で、今関監督が気に入ってメインテーマになりました。

2.禁断の恋 (Forbidden love)

 「M3」及び「M2」。劇中で2度登場する「M3」は、“緑のモチーフ”を後ろから前へ逆行して演奏するアイディアで作られた“愛のモチーフ”が主メロディーとなっています。後半の「M2」は、20年前の美術部の写生会に場面転換する短いブリッジ。

3.フラッシュバック (Flashback)

 圭がウクライナの“緑のトンネル”の夢を見る場面に付けられた「M4」、ウクライナで塩にぎりを作りながら忌まわしい過去を思い出す場面に付けられた「M5」の2 in 1。

 メインモチーフだけで作られた「M4」をパイプオルガンの音色で奏でた理由に、緑のトンネルの形状がまるでゴシック建築の聖堂のようだったからと作曲者は述べています。「M5」はメインテーマの一部を繰り返しながらミニマル的にダイナミックに盛り上がります。

4.歩く、君を想いながら (Walking on, yearning for you)

 圭がようやく緑のトンネルにたどり着く場面の、印象的な曲「M6」です。元々は4曲作られたメインテーマ・デモ曲のうちの1つ「Demo#3:ロマンティック」で、このメロディーはこの曲のみ、他には出てきません。注目したいのは緑のモチーフが消えかかって、鐘の音のように1つの音しか鳴らないこと。作曲者曰く、「哀しみと後悔の念を抱え込んだ圭が夢に向かって歩き続ける時、それまでの哀しみは薄れていく」とのこと。映画本編ではカットされたコーダ部を復活させています。

5.緑のトンネル (Into the green tunnel)

 トンネルの奥へ奥へと進んでいく圭の場面に付けられた「M7」。メインテーマのハープの音型を使った導入部、緑のモチーフを変奏した中盤。のどかでフリーな演奏が一転、合唱のトーンクラスターで忌まわしい過去をフラッシュバック。アルバム中で最も映画音楽らしい曲です。

6.再誕 (Rebirth)

 緑のトンネルでの一葉の“再誕”の場面に付けられた、ダイナミックで強いインパクトのある「M8」。ロシア正教の聖歌風な旋律と合唱スタイルを取り入れた前半、ストリングスが三拍子でメイン・テーマを奏でる後半。コーダはどこまでも長く引き伸ばす和音の後、“ピカルディの三度”によって希望を残す長調にて終わります。実はこれも4曲作られたメインテーマ・デモ曲のうちの1つ「Demo#2:ロシア正教の聖歌的な」で、このメロディーはこの曲のみ、他には出てきません。

7.記憶の目覚め (Reminding)

 言葉を話し出した一葉に思わず抱きつく圭の場面に付けられた「エレメンツB-Type」、再誕して圭と歩く練習をする一葉の場面に付けられた「M8」の2 in 1。次なる「愛のテーマ」へのプロローグ。

8.愛のテーマ (Love Theme)

 2人で塩にぎりを食べながらの幸せな場面に付けられた「M9」。“愛のモチーフ”が鳴り響く中より立ち現れるノスタルジックなメロディー、畳み掛ける美旋律。アルバム中最も美しい瞬間です!

9.天国なんてどこにあるの?(Where is heaven?)

 緑のトンネルの中でしか存在し得ない一葉、半ばやけっぱちになる圭とのやりとりの場面に付けられた「M11」。この短い曲はTr.2「禁断の恋」とTr.8「愛のテーマ」が融合したイメージ。メインモチーフや愛のモチーフを奏で続けるポップ・サウンドが、水面を打つ露のような透明感を醸しだします。

10.光と闇 (Light and darkness)

 一葉の父親と対峙した圭の記憶の場面に付けられた「エレメンツD-Type」、東京へ戻ってくる圭の姿を追った場面に付けられた「M12」の2 in 1。「M12」では「メインテーマ」のビート感が戻ってきます。尚、2曲間を繋ぐ箇所はアルバムのために新たに作曲されました。

11.哀しみ (Lament)

 緑のトンネルで一葉を撮影した8mmフィルムに誰も写っていない…圭が泣き続ける場面に付けられた、悲痛な「M13」。元々、4曲作られた「メインテーマ・デモ曲」のうちの1つで、このメロディーもこの曲のみ、他には出てきません。映画本編では1分52秒までが使用されています。

12.愛のトンネル [メインテーマ・リプライズ] (Main Theme reprise)

 緑のトンネルの奥へ去っていく圭、それを8mmカメラで撮り続けながら見送る一葉の場面に付けられた「M14」。主題歌前の最後の曲です。「メイン・テーマ」が繰り返され、ドラマが終焉を迎えます。そしてアルバムは冒頭の導入部に戻って、3回打ち鳴らされる鐘の音、圭のつけていた鈴の音で締めくくられます。

 
Page Top

Base Designed by
CSS.Design Sample