『VAMP - Original Motion Picture Soundtrack』- Liner Notes

目次

VAMP - Cover Art Designed by Peter Michi Miyazaki VAMP - Back Cover Art Designed by Peter Michi Miyazaki
作曲、編曲、全演奏、録音、プロデュース: 宮ア 道

スキャット(Track13「邪悪な聖歌(M27): ミネストローネ


©2018 Peter Michi Miyazaki
℗2023 Ushi Mark Records


Director

【映画『VAMP』 映画音楽の世界】  小中和哉(「VAMP」監督)

 『VAMP』は僕の監督作品としては久々に兄・小中千昭の脚本で撮った作品でした。共に平成ウルトラマンシリーズには深く関わりながらなぜか組む機会はなく、円谷作品ではビデオ映画『ミラーマンREFLEX』(2006)でコンビを組んだのみ。それ以来の兄弟作品となります。

 兄と久々に企画を考え始めた時、僕から提案したのは、スウェーデン映画『ぼくのエリ - 200歳の少女』(2008)のような作品をやろうということでした。吸血鬼もののホラーではあるけれど、いじめられている子をリアルに描いた日常ドラマ要素もあり、切ないラブストーリーでもあるこの作品は大好きです。兄はそれならと、以前兄弟で作った『毒婦-プアゾン・ボディ』(1995) との共通点を指摘しました。ある女性写真家に惹かれた若者が彼女を尾行していくうち、彼女がデート相手を殺してその写真を撮ることで喜びを感じる異常者であることに気づくが、それでも彼女に魅力を感じ続けてしまうという屈折したラブストーリー。確かに共通点は多い。そこから小中兄弟版『ぼくのエリ…』であり、『毒婦…』の吸血鬼版でもある『VAMP』の企画が始まりました。

 このような日常とは違う特殊な世界観の映画を作る場合、どんな音楽で包んでいくかはとても大事だと考えています。宮ア 道さんは関 顕嗣プロデューサーの後輩で面識はありましたが、音楽をお願いするのは初めて。編集したラッシュ・フィルムを見てもらってどんな音楽を目指すか、最初の打ち合わせで僕が「『コヤニカッティ』のフィリップ・グラスのような…」と言うと強く同意してくれて、そこでこの作品の音楽の方針が固まりました。『コヤニスカッティ』(1982)とは、アメリカの砂漠から都市まで微速度撮影やスローモーションなど様々な技法で撮られた映像をナレーションなしに音楽だけで見せつけて文明批評を展開する映画。フィリップ・グラスのミニマルミュージックが映像と溶け合って絶大なる効果を発揮している傑作です。同じフレーズを繰り返し、少しずつ変わっていくミニマルミュージック特有の音感が映像と掛け算となって強く観客にメッセージを発信していく。その感覚が『VAMP』にも必要だと思いました。

 思い込みの激しい監督故に宮アさんには苦労をかけたと思いますが、宮アさんが作り上げた映画音楽は素晴らしい仕上がりになりました。あの音楽が付いて、『VAMP』の世界観はようやく完成しました。冷たく突き放しているようで、切なく情緒的でもあり、狂っているようでもあり、様々な気持ちにさせてくれます。今回改めてサウンドトラック盤として聴き直し、改めてそう思いました。奥様のスキャット(Track13)も素敵で、すごい贅沢をさせてもらったと思っています。

 映画音楽を付けることで、そのシーンの意味を確定させることになる、と僕は考えています。素で見せるといくつもの解釈が可能なシーンが、映画音楽を付けると、一つの見方に導いていく。その意味で、僕にとって音楽を付けることは重大な意味を持ちます。そしてその大切な仕事を委ねる相手として宮アさんとコンビを組むことができたことは僕にとって幸せでした。このサウンドトラック盤を一番楽しんでいるのは僕かもしれません。みなさんも音楽で語られる『VAMP』の世界をお楽しみください。



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