『オレンジ・ランプ- Original Motion Picture Soundtrack』- Liner Notes
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『映像に溶ける』 宮ア 道
この映画は世界がまだコロナ禍にあった2022年に作られました。監督やプロデューサーとの打ち合わせはオンラインで行われました。
映画『オレンジ・ランプ』の音楽製作期間は1カ月半でしたが、そのうちの1カ月間はロクに成果を上げられなかったんです。三原光尋監督が求めている音楽の在り方が掴めず、作ってはダメ、作ってはダメ…という1カ月強でした。映画は実話、しかも主人公のモデルである丹野智文さんはまだ元気に生きているという題材だけに、監督は過度にドラマティックな音楽は相応しくない、しかし登場人物にどこまで寄り添うべきかはビミョー…という状態。その“距離感”を掴むまでに苦労しました。
映画の音楽で最も神経を使うのは、監督との正しいコンセンサスをとる点でしょう。何しろ“映画”となると、監督はワガママなほど頑固になるものです。イメージしている世界観を“作品”という形にするためには妥協をしません、容赦はしません。だから作品製作という行為に“加担する”には覚悟が必要になります。そして三原監督もまた、自分の映画に付くべき音楽とサウンドを良く理解しており、私の過去作などを聞いた上でこの人なら…と選んでくださったワケで、簡単にいってしまえば私が“素”のままに作るセンスを必要としていました。なので監督は常に「気負わずに、肩の力を抜いて!」と声掛けをして下さいました。
無理して一人でガンバる必要はない、そのままのあなたで良いのだから…とは、この映画のメッセージでもあります。私もそのマインドに立って、映像に溶けていくように寄り添う音楽を目指しました。その音楽をこうしてサントラ盤としてまとめてみると、我ながら「私はなんて地味なんだ」と感じます。“素の自分”がそこにあるので、ちょっとばかり恥ずかしいのです。だからこそこの音楽を聞いて楽しんでいただけたなら、素の自分を褒められているので、いつもの倍は嬉しいです。
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