『A House on The Seaside - MUSIC FOR THE PLAY II』- Liner Notes

目次

a House on the Seaside - Cover Art Designed by Peter Michi Miyazaki a House on the Seaside - Back Cover Art Designed by Peter Michi Miyazaki
作曲、編曲、演奏、録音、プロデュース: 宮ア 道

©2014-2022 Peter Michi Miyazaki
℗2022 Ushi Mark Records


【MUSIC FOR THE PLAY II】  Notes by Ongaku-no-Miyazaki

 アルバム『MONOLOGUES』(2015)から7年、“MUSIC FOR THE PLAY”の続編が登場しました。前作同様、演劇ユニット「初級教室 (The Seed-Class)」が上演した舞台「海辺の家の姉妹」(2014)のために作曲された音楽をもとにした、「演劇のための音楽」です。音楽作品として一から作り直した「a House on the Seaside」のテーマは「死」、それも「幸せな死」です。ピーター宮ア 道さんの描いた音楽劇は、皆さんの脳裏にはどのようなイメージで映るでしょうか?

 2020年、日本ではCOVID-19の大流行で移動の自由が制限され、「StayHome」というスローガンが流行しました。この時期、ピーター宮ア 道さんはいくつかの仕事を失ったものの、これを幸運な長期休暇と考え、自発的に30年にわたる音楽活動の整理を始めました。

 彼には未整理の作品がたくさんありました。それらを整理して、“いつでも誰でもが聞けるようにしよう”というのが、彼の最初の目標でした。それを「StayHome2020プロジェクト」と呼びました。

 改めて「海辺の家の姉妹」の音楽を聴いてみて、全く新しいイメージが浮かんできたと彼は言います。しかしその新しいイメージに近づくためにアレンジだけでなく、演奏そのものを見直すことを決意し、すぐに実行に移しました。新たなイメージのために彼は大変な労力を必要とする方法を選んだのです。約1カ月かけて完成したこの作品は、全編を通して波の音が聞こえてきます。

 「死」というテーマは、パンデミックによって全世界が死の影に覆われたことが影響しています。しかし2021年に彼自身が病に冒され入院・手術を繰り返して「死」をより身近に感じることになるとは想像もできなかったでしょう。

 作品の中の波の音やその振動は、「生きている」こと自体を感じさせてくれます。波は作品全体を通してリズムであり、重要な音楽的要素となっています。このことについて彼は、スザンヌ・チアーニのアルバム「Seven Waves」(1982年)から影響を受けていると言っています。

Director-Minoru Ohta

【海辺の家の姉妹】
        太田 実(初級教室 代表)

 この「A House on the Seaside- Music for The Play U」は、元は2013年秋に横浜で上演した「海辺の家の姉妹」と題する演劇公演の為に書かれた劇音楽でした。今皆さんが聴かれているバージョンは演劇から離れ、宮アさんの新たな解釈の元、より聴かせ、感じさせる組曲となっています。

 より聴かせるというところが、元の演劇の為に書かれたもと大きく違うと思うのです。演劇や映画は見せることが主になりますから、すでに画面や舞台上にある感情などを重複して音楽で表現すると過剰になり、バランスは崩れます。その違いの為に劇音楽の時はかなり制御が掛かかっています。(私はいつも音数を少なくしてと注文してしまいます)

 この「A House on the Seaside- Music for The Play U」は、その制御から放たれて音楽がドラマティックです。宮アさんが生き生きと曲を書かれています。美しいだけじゃなく、強い「怒り」 (Track4 "Love & Anger") まで感じとることができて、感情豊かな組曲と言えます。

 演劇作品「海辺の家の姉妹」は我々演劇ユニット“初級教室”の、いつもの笑いの要素を封印して、近くにいたはずの人のいくつかの死を描いた群像劇となりました。公演当時、2年前に起きた東日本大震災を忘れない思いもどこかにあり、写実的な演出を心がけました。そして我ら演劇ユニット初のカーテンコールを頂いた作品にもなりました。宮アさんの曲の物悲しさや愛が、聴く者に浸潤してゆく事も手助けされて、高評価を得ました。何人かのお客さんにも初級教室の最高傑作とも言われました。最後を飾った Track9 "Ascension(Sisters)" の旋律は名曲の域に達しています。

 効果的に海の潮騒が聴こえて来ますが、私は演劇「海辺の家の姉妹」を上演するにあたり出演者と共にそのモデルになる浜辺の町を1日体験しに行きました。日帰りできる場所として大磯(湘南の元祖)が選ばれ、こんな役場で働いていたんだな。こんな海辺の道を自転車で走ったんだなど、具体的な実感を役の準備としてやったのです。登場人物が持つ子供の頃の記憶。浜辺で砂のお城つくった記憶を追体験する出演メンバーもいました。そんな公演準備の思い出があり、私はほぼ毎年、年末になると宮崎さんのこの劇音楽をスマホに入れ、大磯の海岸を歩きながら聴いています。

 もうひとつ偶然か?と驚くことがありました。アメリカの写実派の画家アンドリューワイエスという人がいます。そのワイエスの作品に「クリスティーナの世界」という作品があり、体に障害がある女性が遠くにある家、納屋を見ている?(実は這っている)絵なのですが、公演稽古中に俳優たちにこの絵を見せて、「今回はこれだよ」などと言った覚えがあるのです。そして「A House on the Seaside- Music for The Play U」のジャケットを見ると、ワイエスの絵に似てるではありませんか。海辺に白いアーリーアメリカン調の家。私がイメージしていた空想の「海辺の家の姉妹」が住んでいる家そのものだったのです。この稽古中のエピソードは、確か宮アさんに話していないはずなんです。なんでしょうか?不思議!

 そんな訳で、とにかく素晴らしい曲ばかりですから、ゆっくりと組曲をお楽しみください!

初級教室HP「海辺の家の姉妹」
Seed-Class

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